大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)3332号 判決

被告人 松尾竹之助

〔抄 録〕

論旨第一点について。

原判決が、その判示第二の事実認定の証拠として、柳生仁の検察官に対する供述調書謄本を挙示していること、及び、右供述調書謄本は、原審第二回公判期日において、検察官から、刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号後段の書面として取調請求があつたのに対し、弁護人より異議の申立があつたにもかかわらず、原裁判所がその異議を棄却して、右取調請求を許容したものであることは、いずれも、所論のとおりであつて、所論は、供述調書謄本は、その取調につき異議があつた以上、これを証拠とすることはできないものであるから、原審の訴訟手続には、この点につき証拠調の方法に法令の違反があり、その違反は判決に影響を及ぼすことが明らかである旨主張するのであるが、しかし、原審第二囘公判調書の記載に徴するときは、前示柳生仁の検察官に対する供述調書謄本の取調請求に対し、原審弁護人が異議を申し立てた理由は、該調書が原本でなくて謄本であるから、その点に不服があるとの趣旨ではなくて、その内容たる柳生仁の供述が、公判廷における供述よりも信用すべき特別の情況がないから、これを証拠とすることに不服があり、これが取調に異議があるとの趣旨であつたことが窺われるのであるから、原裁判所において、右供述調書謄本の内容たる柳生仁の供述が、公判廷における供述よりもこれを信用すべき特別の情況があるものと認めた以上、右異議を棄却して、これが取調請求を許容することは、何ら違法でないといわなければならない。しかして、記録に編綴してある前示供述調書謄本の形式内容を調査し、これを原審第二回公判調書中証人柳生仁の供述記載の内容と対照して検討するに、右供述調書謄本中の供述が、右公判廷における供述よりもこれを信用すべき特別の情況が存すものと認められるのであるから、原裁判所が、原審弁護人の異議を棄却して、前掲供述調書謄本の取調請求を許容したことは適法であつて、原審の訴訟手続には、この点について、所論のような判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違反があるものということはできない。論旨は理由がない。

(中西 山田 石井謹)

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